Mamiko Okuboインタビュー

今回描いていただいた作品のコンセプトを教えてください。

タイトル「陽だまりの記憶」
この作品には、太陽のあたたかな光と、生命力あふれる花たちが、私たち人間にそっと語りかけているような、そんな温かいエネルギーを込めています。
その想いは、テクスチャーを重ねることで色彩に深みを与え、様々な色が混ざり合いながら、やさしく語り合うような雰囲気を生み出しています。
誰もが心の中に持っている「陽だまり」のような、ほっとする場所や記憶。それが、この作品のコンセプトです。
今回テクスチャーにフォーカスしていただきましたが、難しかった点や工夫した点があれば教えてください。
テクスチャーにフォーカスした今回の作品では、ペインティングナイフやスポンジを使いながら、色を少しずつ重ねていくことで、パネル全体にエネルギーと深みを込めていきました。
特に意識したのは、色と色が重なり合うことで生まれる、繊細な対話のようなニュアンスです。
その響き合いが、作品全体の温かさや、やわらかさにつながっていくようなイメージで制作していました。
厚みのバランスには繊細な調整が必要で、途中、表面をやすりで整えながら、テクスチャーの質感を探っていくようなプロセスでした。
最終的には、静かな中にもエネルギーが宿るような、そんな質感に落ち着いたと思っています。
使用しているメディウムは何をお使いですか?また普段使用しているアクリル絵具なども教えていただけると嬉しいです。
下地にはリキテックスのジェッソを使用しています。メディウムはホルベインのマットメディウムを少量加える程度で、全体的にはアクリル絵具そのものの質感を活かして制作しています。
今回の作品では、デコアートのエクストリームシーン、リキテックス、アムステルダム、ターナーのアクリル絵具になります。
絵を描くきっかけを教えていただけますか?
少し長くなりますが、絵を描くようになったきっかけは、コロナ禍が始まった頃に私自身の病気が見つかり、治療に専念することになったことでした。
それまでは金融業界で長年バリバリと働いていましたが、療養中に生き方を見つめ直す時間を持つことになりました。
ステイホームが続く中で、自然に触れる機会を強く求めていたのだと思います。花の彩りや、刻々と変わる空の様子など、自然が常に動き続けていることに気づくたび、「今を生きている」という感覚を得ていたように思います。
もともとアート鑑賞は好きだったのですが、その頃はInstagramやYouTubeでアート制作の動画をよく観ていて、「私も描いてみたい」と思うようになりました。
最初はひたすら花を描いていて、創作の楽しさや、表現することで満たされる感覚に夢中になりました。
半抽象的な描き方を好みながらも、花の個性を引き出す構図にこだわっていたのを覚えています。描き続けるうちに、自然からインスピレーションを受けた抽象表現の面白さに惹かれていくようになり、今に至ります。
大久保様のサイトの自己紹介文を拝見しました。ヨーロッパや中東を旅されていたのですね?一番心に残った国はありますか?また旅をした経験が絵を描く際に与える影響はありますか?
ヨーロッパや中東を7ヶ月ほど14カ国の旅をしたことがあります。見たことのない景色や、想像を超える体験が多く、どこが一番とは言い難いのですが・・・。今はなかなか訪れるのが難しいということもあり、中東地域は特に心に残っています。
ヨルダンのペトラや、シリアの(内戦で破壊されてしまった)パルミラ遺跡などは、壮大かつ時空を超えたスピリチュアルな地でした。砂漠と青空、渇いた空気など、五感で感じたあの時の感覚は今でも鮮明に思い出されます。実際に、ペトラ(『ペトラ~砂漠のピンクシティ』)や、エジプトのルクソール(『ナイルを渡る風』)から着想を得た作品もあります。
旅、特に異国で感じた独特のエネルギーは、私にとって「枠から解き放たれる」感覚であり、オリジナリティを表現するうえで、背中を押してくれる存在だと感じています。
大久保様の作品を見ていると、不思議な心地よさがあり、最後には心の奥がじんわりと温かくなるのを感じます。独特で深い感情が溢れているように感じます。
そのように感じていただけたこと、本当にうれしく思います。私は、作品を通して見る方と深い部分で共鳴が起きたら——
そんな想いで描いています。
とはいえ、狙ってそういうものが描けるわけではなくて。私の場合は、自分自身の体感をできるだけそのまま、飾らずにキャンバスにのせるようにしています。それが自然に湧き上がってくるときもあれば、うまく形にできず、生みの苦しみをとことん味わうときもあります。けれどその過程も含めて、すごく正直な営みだなと感じています。
私が表現したいのは、誰しも備わっている「体感」です。たとえば、風が通り過ぎたときのすっとする感じや、夕暮れの空を見たときにふと心がゆるむ瞬間——そんな何気ない感覚の中に、人の琴線にふれるような静かな感情が潜んでいる気がしています。
私たち人間も自然界の一部として生きていて、日々の感覚や感情も、すべて自然のリズムの中にあると思っています。
だからこそ、創作を通してそのリズムにできるだけ忠実でありたい。
その静かな波のようなものが、見る人にも伝わっていたのだとしたら、とても幸せなことです。
最後に大久保様にとって絵を描くこととはご自身にとってどんな意味を持っていますでしょうか?
私にとって絵を描くこと、創作することは、「自分を信じる」というプロセスそのものです。
私は、「やりたいと思ったことは、いつからでも始めていい」と考えています。年齢やタイミングに縛られる必要はない。その思いが、自分の創作における自由さにもつながっています。
描くという行為は、自分に嘘をつかず、本質的な姿勢で向き合うこと。だからこそ、作品を通して「自分とつながっている」と感じられる時間でもあります。
MamikoOkuboさん作品

「陽だまりの記憶」MamikoOkubo
今回使用した素材・絵具





