日比谷泰一郎インタビュー

- 様々な活動をされていますが簡単にプロフィールを教えてください。
- アートに触れるきっかけは何でしたか?
- 今回制作していただいた作品についてお聞きします。作品のタイトルとコンセプトを教えてください。また作業時間はどのくらいでしょうか?
- 色合いなど、これまでの作品も素敵ですがこんな感じが好き!やインスピレーションを受けているものはありますか?
- 作品を描いている場所がアートな感じですが、アート集中!の特別な部屋があるのでしょうか?
- お仕事をされながら絵も描かれていてお忙しいと思いますが、2つのバランスをどうやって取っていますか?
- 壁面アートなどをやられていますが、今後やってみたいアート作品や挑戦してみたいことはありますか?
- 最後にお聞きします。日比谷さんにとって絵を描くこととは何でしょうか?
- 日比谷泰一郎さん作品
- 今回使用した素材・絵具
様々な活動をされていますが簡単にプロフィールを教えてください。
1987年 埼玉県生まれ
2010年 武蔵野美術大学造形学部日本画学科卒業
2012年 武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻日本画コース修了
個展、グループ展多数。受賞歴に、神戸ビエンナーレ2015ペインティングアート展入賞、
アクリルガッシュビエンナーレ2018佳作、
TENNOZ ART FESTIVAL 2022公募壁画アーティスト選出、
SHIBUYA ART AWARD 2022入選、UP&COMING ARTIST AWARD 2022優秀賞など。
近年では平面作品だけではなく、オフィスなどの壁画制作も行っています。
アートに触れるきっかけは何でしたか?
小さい頃から絵ばかり描いていました。小学生の時は休み時間に絵を描き、放課後は友達と図工室で工作などをさせてもらってました。中高でも美術部(と軽音部と写真部..笑)だったので、油絵や陶芸など、いろいろ体験させてもらい、そのまま美大かなーという感じで。
高校では数学も得意科目だったのですが、美大は文系科目での受験が主なので、生きませんでしたね。
今回制作していただいた作品についてお聞きします。作品のタイトルとコンセプトを教えてください。また作業時間はどのくらいでしょうか?

タイトルは「Crowds90 #Gate」
コンセプトは、街中を行き交う人々をドローイングし、そのドローイングをそのまま活かす形で作品に再構成することによって、確かに人々がここに存在していた、という事実を証明するような、日常の抽出を試みました。
鑑賞者にとっても、繰り返される日常の価値、意義を再考するきっかけになるような作品を生み出したいと思っています。

作業時間は30時間程でしょうか。およそ1日3時間×9日間程といった具合です。
制作中の動画を拝見しましたが、日本画で使用する筆でしょうか?絵具をたくさん含めるので塗りやすいのでしょうか?

主に日本画用の筆が多いです。清晨堂の削用の大や別大が特にお気に入りです。含みがよくてコシもあり、筆先がよく効く筆です。岩絵具、アクリル絵の具ともに含みがよく描きやすいです。
シーケンスの動画を拝見しましたが、光を当ててどのような手法でやられているのでしょうか?

まず人々が行き交う駅などで取材をし、ドローイングをたくさん描きます。それをスキャンして線描データに起こし、PC上でどのような絵画の画面構成にしようか検討します。
検討したものをプロジェクターでパネルやキャンバスに投影し、それをなぞりながらタブロー(本制作)に変換していくような工程を踏んでいます。
最近は、ドローイング自体をipadで行い、デジタルで始まって、アナログ画面に落とし込む流れもあります。
ゴールドのラインは何を使われているのでしょうか?
アムステルダムのアクリリック、ブロンズという色です。筆ではなく、ホットドッグにケチャップを絞る際の容器に絵具をつめて、絞り出しながら描いています。
普段の人々のドローイングも、動いている群衆を描いているため、衝動的な線描が多く、筆ではなくあえて上記のような、ある意味不自由な状態で、描線を描くことで、現場の衝動的な動きやフォルムを再現しています。
アクリル具を薄めて描かれていますが、大学で日本画を専攻された際に学ばれたのでしょうか?

今は岩絵具とアクリル絵具のハイブリッドで描いていますので、そういう意味では日本画専攻だった経験は活かされています。
日本画ではたらし込みという技法があり、先に水を引いた上に、色をいくつか置いていく技法ですが、アクリル絵具でも水分量を調整し、たらし込みを行ったりします。
荒めの岩絵具や金箔など、日本画材もアクリル絵の具の質感と差別化を図りたい時に使用したりしています。
色合いなど、これまでの作品も素敵ですがこんな感じが好き!やインスピレーションを受けているものはありますか?
昔から青系やピンク、グリーンは好きな色味で、コントロール出来ると感じていますが、オレンジ系はまだまだで、本作では採用していませんが最近はオレンジと仲良くなることが、自身の課題テーマでもあります。
インスピレーションとしては、美術館やギャラリー巡りなど、普段から作品鑑賞をよくしますし、ファッションやアニメ、ゲームなど、自分自身が好きなコンテンツから、好みの配色やパターンなどを取り入れたりもします。
作品制作でアウトプットするターンと、色々と見たりするインプットのターンのバランスが自身のモチベーションを保つ上で大事かなと思っています。
作品を描いている場所がアートな感じですが、アート集中!の特別な部屋があるのでしょうか?


自宅の一部屋をアトリエにしています。100号を寝かせてギリギリ制作出来るくらいのスペースですが。休みの日は子どもが入ってきて一緒に制作したりしています。
お仕事をされながら絵も描かれていてお忙しいと思いますが、2つのバランスをどうやって取っていますか?
実は5月に転職しました。前は大学事務で働いていたので、日中はフルタイムで働き、夜は子供の面倒をみて、深夜に制作、といったルーティンでした。
ただこのルーティンが体力的にキツくなってきたのと、仕事自体も自分のスキルを活かせるジャンルが良いなと思い、
5月に別の大学の造形表現学科という学科の助教になりました。授業の時間は外せませんが、ある程度自分の裁量で勤務をコントロールできるので、制作とのバランスは取りやすくなった気がします。
学生の絵画や立体などの表現を見たり、それについて話したりすることも、自身のモチベーションにつながっているかなとも思います。
壁面アートなどをやられていますが、今後やってみたいアート作品や挑戦してみたいことはありますか?
壁画は今までオフィスや半屋外の施設などで制作させて頂きました。完全な野外かつ大きいパブリックなスペースのものは手掛けたことがないので、そういった壁画は挑戦してみたいです。

2021年
W17m×H1.6m
Client: 富士通株式会社
Space Design: コクヨ株式会社
Photo:SS企画

2022年
W6m×H2.6m
Client: 東京コンピュータサービス
Space design: 株式会社オカムラ
日比谷さんインスタグラム・HPより引用
あとは絵画制作だけでなく、その作品を活かしたグッズ制作も種類を増やしたいと思っています。特にカーテンやクッション、ラグなどのファブリック展開が合いそうかなと。
最後にお聞きします。日比谷さんにとって絵を描くこととは何でしょうか?
自分にとっては生きがいです。
以前「美術は心を豊かにするから是非続けて」と言われたことがありますが、鑑賞者にとってというよりは、自分自身から出力し続けること、制作・発表を続けていくことが、自分の存在証明となり、心持ちを安定させ、コミュニティも拡がっていく。そんな気がしています。
また日常のドローイングという行為と、それを画面に残す制作としての記録が、作品として、誰かの家で飾られ続けたり、どこかのオフィス壁画として常設され続けたりすることで、後世につながっていけば作家冥利に尽きるだろうなと思っています。
日比谷泰一郎さん作品

「Crowds90 #Gate」日比谷泰一郎
今回使用した素材・絵具



ウッドパネル30×30
メーカー品番:425-02101
(株式会社サン-ケイ)
アクアマリン
《デコアート・エクストリームシーン》
ピンク トルマリン
《デコアート・エクストリームシーン》



